SSブログ

hereby [単語・表現]

herebyは一般に軽く見られているようだ。

『英文契約書の基礎知識(宮野準治/飯泉恵美子)48Pには、次のように書いてある。
契約書中の特に強調される条項の中で多く使用されます。たとえば、"The Seller hereby confirmas that..."とか"The parties hereto hereby agree that..."のように使用されますが、特にherebyがなくても意味は変わりません。


また故早川武夫教授と椙山敬士弁護士の書かれた『法律英語の基礎知識[増補版]』では、プレーン・イングリッシュ運動についての文脈においてではあるが、次のような記述がある(P117)。
…PE化の第一着手はhereby、whereas、withnessethなどのarchaismsを残らずひとまとめにしてゴミ棄場に投棄(dump)することである。…


他にも英文契約に関するサイトをみてみると、herebyは「訳出しない方が自然」、「正式な文章の感じになる」といった程度のことしか書かれていない。

herebyの言葉としての意味(「本契約により」、「これにより」等)は辞書や参考書をみればわかる。しかし、法律的な意味でherebyがどのような機能を果たしているかについて書かれている資料を目にしたことがない。本当にherebyは、あってもなくても意味は変わらず、ゴミのような価値しかなく、訳出すると不自然で、単にお堅い雰囲気を醸し出すためだけのものなのだろうか。

The parties hereby agree as follows: (当事者は、本契約により以下のとおり合意する。)

契約前文によく使われる上記のフレーズの場合、確かにherebyは不要のように思える。合意の手段として「本契約」を用いているのは自明だからである。しかし以下の場合はどうだろうか。

(1) X will assign A to Y. (XはYにAを譲渡する。)

(2) X hereby assigns A to Y. (Xは本契約によりYにAを譲渡する。)

(1)の場合は将来において譲渡を行う義務を負うのに対して、(2)では、まさにその契約により譲渡行為が行われるという意味の違いがあると思う。これは所有権の移転時期を判断するうえで非常に重要な点ではないだろうか。herebyがなくとも英語では助動詞の有無により上の区別ができるのかもしれない。が、和訳では通常willは訳出されないので、「本契約により」という訳語により(2)のニュアンスを表さざるを得ないと思う。

契約の翻訳は、原文に込められた意味を余すところなく日本語にすべきだと思う。多少冗長になるかもしれないが、herebyもきちんと訳出した方がよいと私は思う。


英文契約書の基礎知識

英文契約書の基礎知識

  • 作者: 宮野 準治
  • 出版社/メーカー: ジャパンタイムズ
  • 発売日: 1997/12/05
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



法律英語の基礎知識

法律英語の基礎知識

  • 作者: 早川 武夫
  • 出版社/メーカー: 商事法務
  • 発売日: 2005/10
  • メディア: 単行本


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:学問

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

-|procure that ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。