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shallとwill [単語・表現]

『英文ビジネス契約書大辞典』(山本孝夫)の「自分の側の義務を規定する用語-will」という項目(P462~)から抜粋する。
"will"も契約書の中でよく使われる用語である。…ただし、どちらかといえば、契約交渉での立場の強い側が自分の側の義務を規定する場面で使う傾向がある。したがって、実際の契約での使用例を見ていると、義務を規定する場合に、その意味と程度が"shall"と比べて、やや曖昧不明瞭で弱いのではないかという感じがする。これは感覚の問題であって、理論や判例を調べれば解決するという問題ではない。実務担当者が交渉するときに感じる感覚、不安感といってもいい問題である。…

これに続けて、相手側の義務については"will"が使用され、こちらの義務については"shall"が使用されている契約案を先方から受け取ったときの対処例が書かれている。有益な情報だと思うが、その部分は本題から離れるので省略した。

『英文契約書の基礎知識』(宮野準治/飯泉恵美子)の45Pでは、willとshallについて次のように書かれている。
"will"は「未来」「推量」を表し、状況を客観的に説明する場合に使用します。また、「"shall"よりも柔らかい義務」「単なる期待」を表現したいときにも使用します。…

…契約書で"will"が義務を表す助動詞として統一的に使用されているのなら、…取り立ててこれを"shall"に修正する必要はないでしょう。しかし、契約義務の記載に"shall"と"will"が不統一に使用されているようなら、意味の違いの有無を確認する必要があります。


長谷川俊明弁護士の『ビジネス法律英語入門』(P175)では以下のとおり説明されている。
…"will"も契約書中では単純未来として現れることは多くありません。"shall"と同様に契約当事者の義務を表すことが多いのです。ただし"shall"に比べるとニュアンス的に多少弱い感じがします。…

なお長谷川弁護士は、こちらのサイトでもwillとshallの違いについて説明されている。

shallとwillが混在した契約は私もしばしば目にする。多くの場合、いろんな雛形から条項を寄せ集めたために不統一になっているだけのようである。だが中には、明らかに上に書いたような意味でwillとshallを使い分けていて、やらしいなと感じるものもある。

上述の著作はいずれも、willとshallをどのように訳し分けるかについてまでは書いていない。契約条項の訳例をみても、『英文ビジネス契約書大辞典』ではwillもshallも「ものとする」となっており、『英文契約書の基礎知識』ではどちらも「する」に統一されている。あくまで感覚的な違いなので、訳し分けることは無理だという判断だろうか。

私は多くの場合、shallは「~ものとする」、willは「~する」と訳し分けている。「もの」を広辞苑(第五版)で引くと、形式名詞として「そうあって当然のこと」とある。スーパー大辞林 3.0では、同じく形式名詞として、「(「ものとする」の形で)…することとする。 「甲はその責任を負う-とする(契約書ナドノ文言)」
」と出ている。

英語のwillとshallが日本語の「~する」と「~するものとする」と意味的に完全に対応するとは思えないが、若干「~ものとする」の方が義務の程度を強く感じる点でshallに近いように思われ、また少なくとも和訳から英文を推測する際の記号的な意味もあろうかと思い、そのように訳し分けている。


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  • 発売日: 2000/12
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