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英米法総論(上) [参考書]

この上巻は、主として英米法の歴史的発展の過程をまとめたものであり、「概観」、「イギリス法の歴史」、「アメリカ法の歴史」、「コモンウェルス」の4つの章から成っている。

英米法のとっつきにくさは、様々の面でのその二元性にあると思う。例えば、コモン・ローとエクイティ(衡平法)の二元性、それに英国では連合王国とスコットランド、イングランド等の各地域の二元性、アメリカでは州と連邦の二元性。いずれも基礎的知識として頭ではわかっていたつもりでも、日本法にはない特徴なので十分に理解することは難しいと感じる。

が、全360ページに小さい文字がびっしりとつまった本書をなんとか通読し終わると、たとえ細かい内容は忘れてしまうとしても、そうした二元性に対する感覚が確かに身についたようでうれしい。特に、独立戦争から南北戦争、その後の連邦と州のせめぎ合いに関する描写は、読んでいてとてもスリリングで面白かった。

但し、コモン・ローとエクイティについては、その区別が現代の法体系の中でどのような意味を持つのかまで十分にわかったとはいえない。イギリスでもアメリカでも、19世紀にはコモン・ローとエクイティが融合された旨の記述があるが、それは両者の区別が完全に意味を失ったということではないように思う。

現在の英文契約でも、at law or in equity(コモン・ロー上またはエクイティ上)、equitable remedy(エクイティ上の救済手段)、legal title(コモン・ロー上の権原)といった言葉をよく目にする。これらは単に古くさい表現を無意識に踏襲しているというだけではないように思われるが、そうした言葉を用いる実際上の意義はどこにあるのだろうか。下巻を読めばこうした疑問もある程度解決できるのかもしれない。いつになるかわからないが、そのときが楽しみだ。

いずれにせよ、法律英語というものが長い歴史、それもほんの百数十年前に発明された日本の近代法律用語とは比べものにならない長い歴史を背負った存在であることが非常によくわかる一冊であった。


英米法総論 上

英米法総論 上

  • 作者: 田中 英夫
  • 出版社/メーカー: 東京大学出版会
  • 発売日: 1980/03
  • メディア: 単行本



英米法総論 下

英米法総論 下

  • 作者: 田中 英夫
  • 出版社/メーカー: 東京大学出版会
  • 発売日: 1980/12
  • メディア: 単行本



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